谷口 昭 (教授) 日本法制史

プロフィール

1 研究分野

 前近代における国家と行政(裁判)機構の分析を基盤とする社会構造の解明。
 


2 趣  味

 テニス、写真、デジタル・データ、そして自然と接すること。
 

3 最近の関心事

 時間的な奥行きと空間的な広がりをもつもの全て。なかでも、伝統的日本社会が摂取し変容させた中国型・西洋型の組織原理や法の世界に遊ぶこと。それらが断絶し、また連続しつつ織りなしてきた転換の諸相から、現代にいたる日本および日本人のアイデンティティが探れるものと思っている。

 


4 主要業績


〔学術論文等〕

「諸国申請雑事─摂関期朝廷と地方行政─」(単著)(日本史研究会史料研究部会編『中世の権力と民衆』所収、昭和45年)
「続文攷─太政官行政の一側面─」(単著)(『法制史研究』22、昭和48年)
「最後の転封─伊勢国亀山藩の場合─」(単著)(『三重県史研究』3、昭和62年)
「転換期の太政官行政─中世国家像によせて─」(『名城法学』37巻別冊、昭63年)
「板倉家の法令─家法と(亀山藩)領知の法─」(単著)(『名城法学』41巻別冊、平成3年)
「近世の家産官僚─譜代大名の転封を素材として─」(単著)(『名城法学』41巻4号、平成4年)
「大名の領知と家産─城邑の引渡を中心に─」(単著)(『名城法学』42巻4号、平成4年)
「転封記録の存在形態─1複合的転封記録の存在/2一件記録と周辺史料─(単著)(『名城法学』42巻3号/43巻3号、平成5年)
「中世国家と公家新制─制度的普遍性を検討するために─」(単著)(上横手先生退官記念『古代・中世の政治と文化』所収、思文閣出版、平成6年)
「貴族・家職・官僚制─法と社会に見る─」(村井康彦編『公家と武家 その比較文明  史的考察』所収、平成7年10月、思文閣出版)(単著)
 「近世の領知法と家産官僚」(『名城法学』45巻2号、平成7年)(単著)
 「転封考 史料編 松平乗邑文書(一〜六)(単著)(『名城法学』45-3〜48-1分載、平成8〜10年)
 「輪中村落の研究 史料編 東高木家文書(一)(単著)(『名城法学』48-4、平成11年)
「亀山拾冊─松平乗邑の足跡─」(単著)(三重郷土会『三重の古文化』82、平成11年)
「家中の成立─甲府支族越智松平家の場合─」(単著)
 (笠谷和比古編『公家と武家U 家の比較文明史的考察』所収、思文閣出版、平成11年) 

〔その他〕

『近世亀山藩大庄屋記録 九々五集』(共著、監修・校訂・解題)(亀山市教育委員会、昭和61年)
 (平成9〜10年度 科学研究費補助金基盤研究C2報告書)
『転封の研究─日本型官僚制原理の考察と近世国家像の再構築─』(単著)(平成11年) 


研究・教育

1 研究活動

 メインテーマとしての古代・中世にまたがる国家機構の動態的な分析は、2〜3年来、散発的な個別論文・書評と研究会報告に終わり、サブテーマとなった幕藩官僚制についても、懸案の『転封 ─近世の法と国制再考─』(名城大学法学会選書)の上梓にいたらず、結果として平成11年は文書史料の海 ─調査と処理の─に溺れる破目となった。
 甚だ不本意な状況について些かの弁明を自らに許容するならば、前年の科研助成研究に続いて学内学術研究助成(特定)「大名家中の形成過程にみる日本型組織の源流 ─史料のデジタル化と併せて─」を得ることができ、引き続き史料蒐集に忙殺されたことによる。家中形成の実態を個別に明らかにする過程で、幕藩官僚制の特質に組織原理という新機軸を加えることが、必然的に明治維新期における大規模かつ急激な家中の消滅と近代的な官僚制への転回という提言を予想させる目的であり、現代にも継続する日本型組織の源流を探る試みとしたのである。同時に従前の調査の欠落部分を補完し、「御用日記」「家譜」までを対象とする原史料の蒐集に留まらず、これらをデジタル画像化することで史料蒐集と公開の新しい手法を実用化する研究計画であった。
 この結果、漸く近世国家論を展開しようとするサブテーマの史料調査は全国制覇をなし遂げた(?)ことになるが、尨大な史料の一部はいまだデジタル処理の途上にある。せめてもの慰めは、幕藩官僚の一隅をなす譜代大名越智家について、その形成モデルを提示した「家中の成立」を公表できたことであろうか。藩法研究会(第2次)の成果とあわせて、近日中(12年5月)に画像データと関連データベースをホームページ上で提供できるようになった。数ギカ程度の些かな(?)ページではあるが、全国縦横にネット上で史料画像に接する環境が整えば、文字通り地を這いずり回った時間とエネルギーは、懐かしい記憶となるのであろう。
 かように二つのかなり大きいテーマを抱えながら、道いまだしという焦燥を少しでも早く解消できることを願いつつY2Kを迎えたのである。


2 教育活動

 学部の講義としては「日本法制史」「日本社会論」を担当。ともに、日本型(法)社会の特質を、日本に固有の伝統的な要素と前近代中国型社会および近代西欧モデルのギャップと、それらの受容・同化のプロセスを明らかにし、「日本化」というキーワードから探り出そうとする視点に基づいている。演習は「日本法制史の諸問題」。ゼミ生の関心に応じた自由なテーマの選択ができるが、2年間の最後には必ずワープロ稿の卒論を要求。ゼミ生自身の手でカラー DTP を実現、一冊の卒論集を編集・完成させている。
 大学院では「日本法制史研究」「日本法制史料研究」を担当。学部の講義では所与のものとした学説・史料を追体験することで、受講生の知識レベルを学会水準まで高める意味を籠めている。


3 学外活動

 亀山市文化財専門委員・歴史博物館運営委員長、三重県史編纂専門委員として、地域社会の文化財行政および生涯教育に多少の貢献。国際日本文化研究センター共同研究員として、自らの知見を磨き、日本を基軸とした比較文明論の共同研究に従事。